特定技能ビザの要件をできるだけわかりやすく徹底解説

「特定技能ビザ」をできるだけわかりやすく徹底解説

「特定技能ビザ」は、2019年4月にできた新しい在留資格です。(この記事では、わかりやすさを重視して、在留資格「特定技能」を特定技能ビザと呼ぶことにします。)この特定技能ビザは、人手不足の解消のために作られました。

つまり、日本政府は、人手不足が解消されるくらいの外国人を受け入れようとしているのです。受け入れ予定の人数は、なんと5年間で約35万人です!しかし、制度の難しさや新型コロナウイルス感染症の影響で特定技能ビザを持つ外国人(以下、「特定技能外国人」といいます。)はまだごく僅かです。制度スタートから1年が経過した2020年3月末の時点で、特定技能外国人は全国でたったの3,987人でした。

とはいえ、これから特定技能外国人は確実に増えていきます。なにせこれは政府(日本国)が決めた政策なのですから―。そのため、今のうちから自社に特定技能外国人を受け入れる体制を整えておきたい!とりあえず一人でも特定技能外国人を雇用してみたい!とお考えかもしれません。

しかし、はっきり言います。このビザはとても複雑で面倒です。なぜなら、技能実習生の受け入れで発生した問題が再び起きないよう、法律でがんじがらめにしたのが、この特定技能ビザだからです。とはいえ、実際に特定技能外国人を雇用して人手不足を解消し、業績を上げている企業が既に幾つもあるのもまた事実です。

この記事では、石川県で初の特定技能1号(外食業)の許可を取り次いだ私(代表の古川)が、特定技能ビザをできる限り詳しく、そして、できるだけわかりやすく解説します。

目次

特定技能ビザの要件

特定技能ビザを活用するための要件(法律などで決められている条件のこと)は、他のビザと比較しても非常に多いです。しかし、特定技能ビザの要件は、次の4つに分けることができます。(専門書では別の分け方をしていることがありますが、わかりやすさを重視した分け方にしています。)それは、

  1.  会社の要件
  2.  外国人自身の要件
  3.  雇用契約の要件
  4.  外国人支援の要件

です。

まず確認すべきなのは「1.会社の要件」です。特定技能外国人の所属先、受け皿となる会社が要件に該当していなければ、特定技能ビザの活用はそもそも無理だからです。

次に確認すべきなのは「2.外国人自身の要件」です。この要件を学ぶなら、どんな外国人が特定技能外国人になれるのか、特定技能ビザで雇いたい外国人にどんな試験に合格してもらう必要があるのかなどがわかります。

そして、実際に受け入れを検討しているなら、「3.雇用契約の要件」と「4.外国人支援の要件」を詳しく学ぶ必要があります。実務では、この2つの要件で入国管理局(現在は「出入国在留管理局」ですが、まだ世間に浸透していないので「入国管理局」と呼んじゃいます。)から指摘を受けることが多いです。

では、それぞれの要件を詳しく見ていきましょう。

1.会社の要件

1-1.国が指定した業種に含まれていること

まず、特定技能外国人を雇用する会社(個人事業主も含む。)は、国が「これは深刻な人手不足だ!」と判断した業種(分野)に該当している必要があります。2020年7月時点では、次の14分野が指定されています。(これから、さらに業種が追加されるかもしれません。)

① 介護

② ビルクリーニング

③ 素形材産業

④ 産業機械製造業

⑤ 電気・電子情報関連産業

⑥ 建設

⑦ 造船・舶用工業

⑧ 自動車整備

⑨ 航空

⑩ 宿泊

⑪ 農業

⑫ 漁業

⑬ 飲食料品製造業

⑭ 外食業

例えば、ホテルや旅館であれば、⑩宿泊分野に該当しますし、食堂は、⑭外食業分野に該当することになります。(こういう判断はそんなに難しくないですね。)

しかし、判断するのが面倒な分野があります。それは、③素形材産業、④産業機械製造業、⑤電気・電子情報関連産業、そして⑬飲食料品製造業の4分野です。

これらに関しては、より細かく該当する業種が指定されています。そして、総務省のお役人さんが作った「日本標準産業分類」という表を見ないと判断できません。以下の表で、この4分野の中で該当する業種を示します。

分 野 該当業種
③ 素形材産業 2194-鋳型製造業(中子を含む)

225-鉄素形材製造業

235-非鉄金属素形材製造業

2424-作業工具製造業

2431-配管工事用附属品製造業(バルブ,コックを除く)

245-金属素形材製品製造業

2465-金属熱処理業

2534-工業窯炉製造業

2592-弁・同附属品製造業

2651-鋳造装置製造業

2691-金属用金型・同部分品・附属品製造業

2692-非金属用金型・同部分品・附属品製造業

2929-その他の産業用電気機械器具製造業(車両用,船舶用を含む)

3295-工業用模型製造業

④ 産業機械製造業 2422-機械刃物製造業

248-ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業

25-はん用機械器具製造業(2534-工業窯炉製造業,2591-消火器具・消火装置製造業,2592-弁・同附属品製造業を除く。)

26-生産用機械器具製造業(2651-鋳造装置製造業,2691-金属用金型・同部分品・附属品製造業,2692-非金属用金型・同部分品・附属品製造業を除く。)

270-管理,補助的経済活動を行う事業所(27 業務用機械器具製造業)

271-事務用機械器具製造業

272-サービス用・娯楽用機械器具製造業

273-計量器・測定器・分析機器・試験機・測量機械器具・理化学機械器具製造業

275-光学機械器具・レンズ製造業

⑤ 電気・電子情報関連産業 28-電子部品・デバイス・電子回路製造業

29-電気機械器具製造業(2922-内燃機関電装品製造業,2929-その他の産業用電気機械器具製造業(車両用,船舶用を含む)を除く。)

30-情報通信機械器具製造業

⑬ 飲食料品製造業 09-食料品製造業

101-清涼飲料製造業

103-茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)

104-製氷業

5861-菓子小売業(製造小売)

5863-パン小売業(製造小売)

5897-豆腐・かまぼこ等加工食品小売業

この表の中にある業種であれば、国が深刻な人手不足と判断し、特定技能外国人を雇用することができます。そして、どの業種に該当するかは事業所ごとの判断となります。
言葉で説明するとなかなか難しいので、簡単な具体例を挙げてみましょう。

【例題】ケーキ屋さんは、この14業種に含まれているでしょうか?

【回答】まずケーキ屋さんが、この14分野のどれに該当しそうかを考えます。ケーキ屋さんは、ケーキの製造・販売をしているわけですから、何となく⑬飲食料品製造業に該当しそうです。

でも、これで終わりではなく、(上述したように)飲食料品製造業の場合、上の表に書かれている業種しか該当しないので、その中に含まれるのかを確認する必要があります。

上の表を見るとケーキは菓子に含まれそうなので「5861-菓子小売業(製造小売)」が該当しそうと目星を付けることができます。

そして、それが正しいのか総務省のホームページに行き、「日本標準産業分類」の「説明及び内容例示」という資料を見て確認します。この資料には、以下の手順でたどり着くことができます。

そこから、分類項目名、説明及び内容例示(一覧表示)

I.卸売業,小売業

大分類 I 卸売業,小売業   説明及び内容例示(PDF:151KB)

と進むと見つかります。

この資料(PDFファイル)の中を見て、今回の場合「5861-菓子小売業(製造小売)」の説明個所を探します。そしたら、ありました!そこには、こんな説明が書かれています。

5861 菓子小売 業(製造小売)
主として各種の菓子類,あめ類を製造してその場所で小売する事業所をいう。
主としてパン類を製造して小売する事業所は細分類 5863 に分類される。
○洋菓子小売業(製造小売);和菓子小売業(製造小売);干菓子小売業(製造小売);だ菓子小売業(製造小売);せんべい小売業(製造小売);あめ小売業(製造小売);ケーキ小売業(製造小売);まんじゅう小売業(製造小売);もち小売業(製造小売);焼いも屋;甘ぐり小売業;アイスクリーム・アイスキャンデー小売業(製造小売);ドーナッツ小売業(製造小売)

ここを見ると、ちゃんと「ケーキ小売業(製造小売)」が「〇」となっています。このように、ケーキ屋さんが飲食料品製造業分野の「5861-菓子小売業(製造小売)」に確かに該当しているということが確認できました。したがって、ケーキ屋さんは、この14業種に該当しています!

この確認方法や手順は、日本標準産業分類で確認する必要がある分野(③素形材産業、④産業機械製造業、⑤電気・電子情報関連産業、⑬飲食料品製造業)において、自社が該当しているか確認するうえでとても有効です!!

実は、この部分の判断は、特定技能ビザを専門にしている行政書士でもとても慎重になります。本当は該当していないのに、該当していると判断して手続きを進めたら大変なことになりますからね~。

もし自分で確認してみたものの本当に該当しているのか不安な場合は、特定技能ビザに詳しく実績のある行政書士に相談されることをお勧めします。

1-2.省令で定める業務に従事すること

特定技能外国人ができる仕事内容は法律(入管法と法務省令)で決められています。

その法律によると、特定技能(1号)外国人は、「相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する」必要があります。簡単に言うと、それぞれの分野または業種ごとに技能試験がありますが、「この技能試験で出題された知識を必要とする仕事をさせてくださいね」ということです。

各分野で特定技能外国人が主に従事する業務内容は、以下の通りです。

分 野 従事する業務
① 介護

・身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴,食事,排せつの介助等)のほか,これに付随する支援業務(レクリエーションの実施,機能訓練の補助等)
(注)訪問系サービスは対象外
〔1試験区分〕

② ビルクリーニング ・建築物内部の清掃
〔1試験区分〕
③ 素形材産業 ・鋳造
・鍛造
・ダイカスト
・機械加工
・金属プレス加工
・工場板金
・めっき
・アルミニウム陽極酸化処理
・仕上げ
・機械検査
・機械保全
・塗装・溶接
〔13試験区分〕
④ 産業機械製造業 ・鋳造
・鍛造
・ダイカスト
・機械加工
・塗装
・鉄工
・電子機器組立て
・電気機器組立て
・プリント配線板製造
・プラスチック成形
・金属プレス加工
・溶接
・工場板金
・めっき
・仕上げ
・機械検査
・機械保全
・工業包装
〔18試験区分〕
⑤ 電気・電子情報関連産業 ・機械加工
・金属プレス加工
・工場板金
・めっき
・仕上げ
・機械保全
・電子機器組立て
・電気機器組立て
・プリント配線板製造
・プラスチック成形
・塗装
・溶接
・工業包装
〔13試験区分〕
⑥ 建設 ・型枠施工
・左官
・コンクリート圧送
・トンネル推進工
・建設機械施工
・土工
・屋根ふき
・電気通信
・鉄筋施工
・鉄筋継手
・内装仕上げ/表装
・とび
・建築大工
・配管
・建築板金
・保温保冷
・吹付ウレタン断熱
・海洋土木工
〔18試験区分〕
⑦ 造船・舶用工業 ・溶接
・塗装
・鉄工
・仕上げ
・機械加工
・電気機器組立て
〔6試験区分〕
⑧ 自動車整備 ・自動車の日常点検整備,定期点検整備,分解整備
〔1試験区分〕
⑨ 航空 ・空港グランドハンドリング(地上走行支援業務,手荷物・貨物取扱業務等)
・航空機整備(機体,装備品等の整備業務等)
〔2試験区分〕
⑩ 宿泊 ・フロント,企画・広報,接客,レストランサービス等の宿泊サービスの提供
〔1試験区分〕
⑪ 農業 ・耕種農業全般(栽培管理,農産物の集出荷・選別等)
・畜産農業全般(飼養管理,畜産物の集出荷・選別等)
〔2試験区分〕
⑫ 漁業 ・漁業(漁具の製作・補修,水産動植物の探索,漁具・漁労機械の操作,水産動植物の採捕,漁獲物の処理・保蔵,安全衛生の確保等)
・養殖業(養殖資材の製作・補修・管理,養殖水産動植物の育成管理・収獲(穫)・処理,安全衛生の確保等)
〔2試験区分〕
⑬ 飲食料品製造業 ・飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工,安全衛生)
〔1試験区分〕
⑭ 外食業 ・外食業全般(飲食物調理,接客,店舗管理)
〔1試験区分〕

「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」(出入国在留管理庁)より

1-3.労働関係法令、社会保険関係法令、租税関係法令を遵守していること

特定技能外国人を雇用するには、日本で事業をする上で当然の義務を果たしていることが求められます。その中で、特に労働関係法令、社会保険関係法令、租税関係法令を遵守していることが必要です。

これは、外国人従業員だけでなく、日本人を含む全従業員に対して、法令を遵守している必要があります。では、具体的に見てみましょう。

まず、「労働関係法令を遵守している」とは、

  1. 労働基準法にのっとった雇用契約を結んでいること
  2. 雇用保険や労災保険の適用手続き&保険料の納付をきちんしていること
  3. 無許可のブローカー(職業紹介事業の許可がない者)からあっせんを受けて、特定技能外国人との雇用契約を結んでいないこと

をいいます。

主にチェックされるのは、これらの点ですが、審査の対象となる労働関係法令は限定されていないので、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、労働派遣法、最低賃金法など×2、様々な労働に関する法律をきちんと守っていることが必要です。
特に建設分野で特定技能外国人を雇用する場合には、労働安全衛生法に基づく教育や講習をきちんと受けさせていることが重要です。
次に、「社会保険関係法令を遵守している」とは、社会保険の適用事業所の場合、適切に社会保険の適用手続きを行い、保険料をきちんと納付していることをいいます。(株式会社などの法人は適用事業所です。)

また、個人事業主など、社会保険が適用されない場合は、事業主本人が、国民健康保険と国民年金に加入し、適切に納付している必要があります。

最後に、「租税関係法令を遵守している」とは、法人の場合、国税(源泉所得税及び復興特別所得税,法人税,消費税及び地方消費税)と地方税(法人住民税)をきちんと納付していることをいいます。

個人事業主の場合は、税目が少し変わり、国税(源泉所得税及び復興特別所得税,申告所得税及び復興特別所得税,消費税及び地方消費税,相続税,贈与税)と地方税(個人住民税)をきちんと納付している必要があります。

上記の点を確認するために、特定技能ビザの入国管理局への申請では、

  • 労働保険では「労働保険料等納付証明書」(未納なし証明)や「労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書」の写し
  • 社会保険では「社会保険料納付状況回答票」など
  • 租税に関しては国税・地方税の「納税証明書」

の提出がそれぞれ求められています。

1-4.1年以内に、従業員を会社都合で解雇していないこと

上述したように、特定技能は人手不足の解消を目的とした制度です。もしその直前に会社都合で従業員を退職させていたら、特定技能制度の趣旨に合いません。
そのため1年以内に解雇者(非自発的離職者)を発生させていないことが求められています。つまり、解雇やリストラはNGだということです。

もし発生させてしまうと、特定技能外国人を雇用することはできなくなります。

ただし、以下のような場合の退職は問題ありません。

  • 定年退職した場合
  • 従業員が重大な違反をして解雇する場合
  • 有期雇用契約の労働者の契約が終了したために退職した場合
  • パートやアルバイトが解雇される場合(フルタイムの正社員ならアウトです。)
  • 特定技能外国人と同種の業務をしていない従業員を解雇する場合

1-5.1年以内に、会社のせいで外国人が行方不明者になっていないこと

これは、特に技能実習生を受け入れている会社にとって注意したい点です。

自社で雇用している技能実習生などの外国人が失踪した場合で、その外国人自身に原因があるなら問題とはなりません。
しかし、賃金未払いや過剰な残業などが発覚し、その結果、外国人が失踪したのであれば、発生から1年間は特定技能外国人を雇用できません。

1-6.5年以内に、以下のような刑罰を受けていないこと

5年以内に、「会社自体」と「会社の役員」(「個人事業主」も含む)が一定の刑罰を受けていないことが求められます。この欠格事由に該当するのは以下のような人です。

  • 禁錮刑または懲役刑を受けた人
  • 外国人関連の法律(入管法・技能実習法など)に違反し、罰金刑を受けた人(または、法人)
  • 労働関連の法律(労働基準法・最低賃金法・労働者派遣法など)に違反し、罰金刑を受けた人(または、法人)
  • 暴力団関連の法律(暴力団対策法・刑法など)に違反し、罰金刑を受けた人(または、法人)
  • 社会保険関連の法律(労災保険法・雇用保険法・健康保険法・厚生年金保険法など)に違反し、罰金刑を受けた人(または、法人)

もし、刑罰を受けていた場合は、刑の執行が終わったときから5年を経過しないと、特定技能外国人を雇用できません。

1-7.5年以内に、実習認定の取り消しを受けていないこと

技能実習生を受け入れている会社で、外国人技能実習機構(OTIT:「オティット」と呼びます。)から、実習認定を取り消された会社は、5年を経過しないと、特定技能外国人を雇用できません。

1-8.5年以内に、出入国または労働関係法令に関する不正行為を行っていないこと

外国人関連(=出入国)や労働関連の法律違反行為は、特定技能外国人に対して行われる可能性が高いため、より厳しくなっています。罰金刑などの刑罰を受けていなくても、「不正行為」をした事実があれば、5年を経過しないと、特定技能外国人を雇用できない可能性があります。

どのような事が不正行為に該当するかについては、特定技能運用要領(という資料)によると、「個別に、具体的な事案の重大性に応じて」判断されます。

とはいえ、外国人関連の不正行為は法律(特定技能基準省令)に明示されており、それは以下のようなことです。

  • 外国人への脅迫・暴行・監禁する行為
  • パスポートや在留カードを取り上げる行為
  • 外国人に給料を支払わない行為
  • 外国人の外出を制限する行為
  • 外国人の携帯電話を没収して外部との連絡を取れないようにする行為
  • 外国人の人権を著しく侵害する行為
  • 入国管理局に提出する書類に虚偽の記載をする行為
  • 不法就労者を雇用する行為 など

1-9.会社の役員の中に、以下に該当する者がいないこと

会社の役員の中に、以下に該当する者がいる場合、特定技能外国人を雇用できません。

  • 精神の機能の障害により、雇用契約に定められた内容を適正に実施できない者(例えば、成年被後見人や成年被保佐人の方など)
  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 未成年であって、その法定代理人が欠格事由に該当する者

1-10.過去2年間の決算状況から見て、会社に安定性・継続性があること

特定技能外国人を雇用する会社は、安定性・継続性が求められています。もし安定性・継続性が欠けているなら、特定技能外国人と結んだ雇用契約を確実に履行することができないためです。

そのため、特定技能ビザの申請時には、入国管理局へ直近2年間分の決算報告書のコピーを提出することになっています。

直近の決算年度において、債務超過になっていなければ問題ありません。(債務超過とは、純資産がマイナスの状態のことです。)しかし、もし債務超過なら、税理士や公認会計士などに依頼し、改善の見通しについて評価を行った書面を提出し、改善の見通しがあることを説明する必要があります。また、もし直近2年度連続して、債務超過の場合は、必ずダメではありませんが、総合的に慎重な判断をされることになります。

これらを表にまとめましたので、参考になさってください。

前事業年度:債務超過なし

前々事業年度:債務超過なし

問題ありません。
前事業年度:債務超過なし

前々事業年度:債務超過あり

問題ありません。
前事業年度:債務超過あり

前々事業年度:債務超過なし

税理士、中小企業診断士、公認会計士など、企業の評価を行うことができる公的資格を持つ第三者による改善の見通しを説明した文書を提出します。
前事業年度:債務超過あり

前々事業年度:債務超過あり

安定性・継続性が欠けていると判断される可能性が高いです。

ただし、改善の見通しを説明した文書とともに、増資や親会社からの救済の予定、長期借入金が多いために債務超過となっているなどの理由がある場合には、そのことを十分説明すれば、安定性・継続性があると判断される可能性もあります。

入国管理局は、総合的かつ慎重に判断するとしています。

以上が、特定技能外国人を雇用する会社(または、個人事業主)に求められる要件になります。このうち1つでも該当していない場合は、特定技能外国人を雇用できませんし、もし虚偽の申請などを行なうなら不法就労となり、摘発されると会社に甚大なダメージを与えることになります。また、この他に各分野特有の要件がある場合があります。特定技能外国人を雇用するには、特定技能ビザに詳しい行政書士などに予め相談されることを強くお勧めします。

2.外国人自身の要件

2-1.イラン以外の国籍であること

イラン国籍以外であれば、どの国籍でも特定技能外国人として受け入れることができます。

時折、二国間の取り決めがなされていない国の外国人は特定技能ビザで雇用できないと思っておられる方がいますが、それは間違いです。ですから、フランス人でもオーストラリア人でも特定技能外国人となることは可能です。実際、日本料理店でフランス人の料理人を雇いたいものの、特定技能ビザ以外、適当な在留資格がなかったため、特定技能で呼びたいという経営者様がおられました。

とはいえ、二国間の取り決めがなされている東南アジアの国々から特定技能外国人の積極的な受け入れが見込まれています。

2-2.18歳以上であること

特定技能外国人は18歳以上である必要があります。

とはいえ、18歳未満でも、ビザ申請をすることや特定技能の試験を受けることは可能です。しかし、日本に上陸する時点では18歳以上でなければなりません。

2-3.健康状態が良好であること

特定技能ビザの入国管理局への申請において、特定技能外国人の健康診断票の提出が求められています。海外から入国する外国人は本国の医療機関で、既に日本にいる外国人は日本の医療機関で健康診断を受ける必要があります。

特に、活動性結核でないことを確認するために「胸部X線検査」は忘れずに受けるようにしてください。受けていないと追加で検査を受けて来るよう求められますので…(苦笑)。

健康診断を受ける場合、法務省のウェブサイトに掲載されている「健康診断個人票(参考様式1-3号)」というものを使うことをお勧めします。そうすれば、検査項目の漏れをなくすことができるからです。

この健康診断個人票は、2020年7月現在、11カ国語(日本語英語ベトナム語タガログ語インドネシア語タイ語ミャンマー語カンボジア語モンゴル語ネパール語中国語)で準備されています。

2-4.技能水準を満たしていること&日常会話程度以上の日本語能力があること

この要件は、特定技能外国人に求められる要件の中でメインとなるものです。

特定技能外国人には、

  • 特定技能の該当する分野の技能試験に合格していること
  • 日本語能力試験(JLPT)N4以上に合格していること(※)

が求められます。

※新たにできた国際交流基金日本語基礎テストA2以上でもOKです。また、介護分野に限っては、介護日本語評価試験に合格していることも必要です。

この技能試験は、日本国内でも、一部の海外でも受験することができます。各試験の詳細については、以下の表にリンク先をまとめましたので、ご確認ください。

分 野 試験についてのサイト
① 介護 厚生労働省のウェブサイト
② ビルクリーニング 公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会のウェブサイト
③ 素形材産業

④ 産業機械製造業

⑤ 電気・電子情報関連産業

経済産業省の特定技能のポータルサイト
⑥ 建設 一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)のウェブサイト
⑦ 造船・舶用工業 一般財団法人 日本海事協会(ClassNK)のウェブサイト
⑧ 自動車整備 一般社団法人日本自動車整備振興会連合会(日整連)のウェブサイト
⑨ 航空 公益社団法人 日本航空技術協会(JAEA)のウェブサイト
⑩ 宿泊 一般社団法人 宿泊業技能試験センターのウェブサイト
⑪ 農業 一般社団法人 全国農業会議所(NCA)のウェブサイト
⑫ 漁業 一般社団法人大日本水産会のウェブサイト
⑬ 飲食料品製造業

⑭ 外食業

一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)のウェブサイト

また、日本語能力試験に関するサイトは以下になります。

● 日本語能力試験のウェブサイト
● 国際交流基金日本語基礎テストのウェブサイト

ただし(以下、重要です!!)、例外として、技能実習2号(2年10ヶ月以上の技能実習です。)を良好に終了しており、かつ、特定技能ビザで従事する業務と技能実習2号の職種に関連性が認められる場合は、技能試験は免除されます。また、技能実習2号の良好修了者は、日本語能力試験に合格している必要もありません。

どの技能実習の職種・作業が特定技能試験の免除対象になるかについては、法務省のウェブサイトにある「特定の分野に係る要領別冊」をご覧ください。

2-5.本国ですべき手続きを行っていること

東南アジアの国を中心に、悪質なブローカーの排除を目的として、日本政府と送り出し国政府との間で「協力覚書」を結んでいることがあります。そして、その覚書の中に、その国ですべき手続きについて定められている場合があります。

また、特定技能ビザに限らず、海外で仕事をする場合に、本国から許可が必要なこともあります。

以下の表で、送り出し国で行なう主な手続きについてまとめました。

送り出し国 海外から来る外国人の手続き 国内にいる外国人の手続き
カンボジア

 

カンボジア労働職業訓練省(MoLVT)から認定を受けた送り出し機関を通して、登録証明書の発行が必要となります。

また、出国前オリエンテーションを受講します。

日本の会社が直接雇用することが可能です。

その場合でも、カンボジア労働職業訓練省(MoLVT)に申請し、登録証明書を発行してもらうことは必要です。

インドネシア

 

在留資格認定証明書(COE)が交付された後、査証申請する前に、海外労働者管理サービスシステム(SISKOTKLN)で移民労働証(E-KTKLN)を取得する必要があります。 ビザの変更申請をする前に、インドネシア人自身が申請し、移民労働証(E-KTKLN)を取得します。

その後、駐日インドネシア大使館へ申請し、推薦状を発行してもらう必要があります。

ネパール

 

査証を取得後、ネパール労働・雇用・社会保障省海外雇用局 日本担当部門から、海外労働許可証を取得します。この許可証は、ネパールを出国時に必要となります。

出国前オリエンテーションと健康診断も出国前にすることが求められています。

さらに、海外労働保険の加入や海外労働者社会福祉基金への支払いも必要です。

特に手続きは必要ありません。

しかし、ネパールに一時帰国した場合、ネパールから出国する際に、海外労働許可証の提示が求められるので、取得する必要があります。

フィリピン

 

就労ビザのフィリピン人を雇用する会社は、駐日フィリピン大使館海外労働事務所(POLO)へ申請し、フィリピン本国の海外雇用庁(POEA)に登録される必要があります。そのためには、会社の社長や委任された従業員が、東京や大阪にあるPOLOの事務所へ行き、英語で面接を受けることになります。

また、フィリピン人自身は、出国前にオリエンテーションと健康診断を受けます。

特に手続きは必要ありません。

しかし、フィリピンに一時帰国した場合、フィリピンから出国する際に、海外雇用許可証(OEC)の提示が求められるので、取得する必要があります。

ミャンマー

 

ミャンマー政府認定の送り出し機関を通す必要があります。

そして、ミャンマー労働・入国管理・人工省(MOLIP)から海外労働身分証明カード(OWIC)を取得します。

日本の会社が直接雇用することが可能です。

特定技能外国人として雇用されることになり会社と契約したなら、そのミャンマー人は、在日本ミャンマー大使館でパスポートの更新申請を行う必要があります。

モンゴル

 

特定技能ビザを取得するモンゴル人は、モンゴル労働・社会保障省労働福祉サービス庁(GOLWS)へ登録する必要があります。

また、日本の会社や職業紹介事業者はGOLWSと双務契約を結びます。

また、来日する際には、GOLWSに対して、査証申請を委任する必要もあります。

日本への来日前に、GOLWSが実施する出国前研修を受けます。

特定技能ビザを取得するモンゴル人は、モンゴル労働・社会保障省労働福祉サービス庁(GOLWS)へ登録し、登録完了証明書の交付を受けます。その証明書は特定技能ビザへの変更申請の際に、入管へ提出します。
ベトナム

 

まだ具体的な手続きが確定していません。 まだ具体的な手続きが確定していません。
タイ

 

特定技能外国人を雇用する会社は、駐日タイ王国大使館労働担当官事務所に雇用契約書等を提出(郵送可)し,認証を受ける必要があります。

その後、認証された雇用契約書等を、タイ王国労働省に提出し,出国許可の発行を申請・許可を取得する必要があります。

在留資格変更が許可された後,雇用した会社または特定技能ビザを持つタイ人は,駐日タイ王国大使館労働担当官事務所に,入社後15日以内に入社報告書を提出する必要があります。

3.雇用契約の要件

雇用契約は、特定技能外国人にとって不利なものとならないよう入管法令で基準が細かく決められています。では、要件を一つずつ見てゆきましょう。

3-1.労働基準法などの労働法令に適合していること

旧態依然の雇用条件で従業員を雇用している会社にとっては、この要件が特定技能ビザの数ある要件の中で一番難しいものとなります。

適合しているべき労働法令とは、代表的なところでは、労働基準法、労働契約法、パートタイム・有期雇用労働用法、労働者派遣法などであり、適合すべきとされている労働法令は限定されていません。

特に、特定技能ビザの申請やその後の定期届出において、次のような点が審査されます。

  • 雇用契約に、絶対に書かないといけない項目(絶対記載事項)が記載されているか
  • 雇用契約は、自社の就業規則と整合性が取れているか
  • 適切に有給休暇を与えているか
  • 変形労働時間制で雇用している場合、適切に年間カレンダーやシフト表を整備しているか
  • 時間外労働・休日労働をさせる場合には、三六協定をきちんと結んでいるか

特定技能外国人を雇用する場合には、ブラック企業ではなく「ホワイト企業」である必要があります。

3-2.省令で定める業務に従事すること

この要件は、1-2で説明したとおりです。特定技能外国人が従事できる業務は、各分野・各業種で決まっていますので、雇用契約書に記載する際、従事する業務の欄には、特定技能省令と同じ業務を記載することになります。(そして当然、その業務に従事します。)

しかし、特定技能外国人と同じ業務をする日本人が通常行なう関連業務も、少ない割合なら(それがメインにならなければ)行なうことができます。

例えば、外食業分野の特定技能外国人が従事すると決められている業務は、接客・調理・店舗管理ですが、同じ仕事をする日本人が、商品の荷受けや清掃などをしているなら、特定技能外国人も行なうことができます。しかし、商品の荷受けや清掃を1日中することはできません。あくまでも全体の業務の1~2割程度に留める必要があります。

3-3.フルタイムで働くこと

特定技能外国人は、フルタイムで働く必要があります。パートやアルバイトのような短時間で働くことはできません。

では、「フルタイム」とは、どれくらい働くことを意味しているのでしょうか?

特定技能制度における「フルタイム」とは、原則、労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であって、かつ、週労働時間が30時間以上であることをいいます。

しかし、この条件よりも、会社の就業規則が優先されるため、もし就業規則に所定労働時間が40時間と書かれていれば、特定技能外国人の所定労働時間も40時間となります。

3-4.給料が日本人と同等であること

外国人だからといって、同じ仕事をしている日本人よりも給料を低くすることはできません。外国人にも日本人と同等の給与を支払う必要があります。

そのため、特定技能ビザの申請の時に、「特定技能外国人の報酬に関する説明書(参考様式第1-4号)」を提出して、日本人と同等以上の給与であることを説明する必要があります。

この説明書で比較対象となる日本人の賃金台帳は、年4回ある定期届出の時に、入管に提出する(個人情報部分は黒塗りして提出します)必要がありチェックを受けますので、どの従業員を比較対象とするかはとても重要です。

また、技能実習2号を修了して特定技能へ移行して来た特定技能外国人の場合、経験年数は0年ではなく3年と評価されますので、3年の実務経験がある日本人従業員と同等の給与である必要があります。

特定技能外国人を雇用する前に、賃金規定を整備しておくことをお勧めします。

3-5.特定技能外国人が一時帰国を希望した場合、必要な有給休暇を取得させること

労働基準法によると、フルタイムで働く従業員には、以下の表のような有給休暇を与えることが義務付けられています。

勤務年数 付与日数
6ヶ月 10日
1年6ヶ月 11日
2年6ヶ月 12日
3年6ヶ月 14日
4年6ヶ月 16日

そして、与えられた有給休暇は最大2年以内に消化しなければ(休暇を実際に取ってもらわなければ)なりません。

この規定は当然、特定技能外国人にも適用されます。そして、それにプラスして特定技能外国人には、一時帰国したいという申し出があった場合に、もし有給休暇をすべて消化していたとしても、追加で休暇を与えるよう配慮しなければなりません。なお、追加で与える休暇は無休休暇でもOKです。

3-6.特定技能外国人が帰国旅費を払えないときに、会社が負担すること

特定技能外国人が来日するための往復の旅費は、原則、特定技能外国人本人が負担します。この旅費負担で、特に問題になるのが帰国のときです。特定技能外国人として5年が経過した後、本国へ帰国する必要がありますが、本人が旅費を払えず帰国できないということもありえます。日本政府としては、そういう理由で帰国されないと困りますし、当然旅費を負担したくありません。もし特定技能外国人本人が帰国旅費を払えないときには、会社が負担するとしているのです。

3-7.定期健康診断を受けさせること

特定技能外国人にも労働安全衛生法が適用されますので、雇用した時と毎年1回以上の健康診断を行う必要があります。

3-8.特定技能外国人に対して不当な費用負担をさせていないこと

過去に、技能実習生やその家族と保証金の徴収や違約金の契約をし、半ば強制労働をさせていたことが大きな社会問題となりました。特定技能においては、そのようなことにならないよう以下が厳しく禁じられています。

  • 外国人からお金(保証金)を預かり、約束した期間勤め上げればお金を返す(できなければお金を没収する)行為
  • 特定技能外国人が途中で退職した場合に、違約金を徴収する行為
  • 特定技能外国人の支援に要する費用を、特定技能外国人に負担させる行為

上記のようなことがないか、雇用する特定技能外国人に十分ヒアリングし、その内容を議事録などに残しておくことがお勧めです。

4.外国人支援の要件

この特定技能外国人支援の要件ですが、必ずしも特定技能外国人を雇用する会社が満たす必要はありません。特定技能外国人支援の全部を登録支援機関に委託すれば、この要件を満たしているとみなされます。(ただし、会社都合などで特定技能外国人が離職する場合、再就職できるように有給休暇を付与することは、雇用する会社自身が行わなければなりません。)つまり、この要件を満たす方法は次の3つです。

  • すべて自社で支援する
  • 一部を自社で、一部を外部に委託する
  • すべてを登録支援機関に委託する

そのため、すべてを登録支援機関に委託すれば、この要件については一件落着なのですが、その代わりに委託料を毎月登録支援機関に支払わなければなりません。相場は一人あたり毎月約3~5万円ほどと言われています。そのため、まず自社で特定技能外国人の支援ができないか検討してみるとよいかもしれません。

自社で特定技能外国人の支援を行えるかの大きな判断材料となるのが「過去2年間で、自社に以下のような在留資格の外国人を雇用した経験があるかどうか」です。

該当する主な在留資格:「技術・人文知識・国際業務」、「技能実習」、「技能」、「高度専門職」、「企業内転勤」、「介護」、「興行」、「特定技能」、「特定活動」など
※在留資格「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者」、「定住者」は該当しませんので、ご注意ください。

過去2年間に上記の在留資格の外国人を問題なく雇用できたのであれば、自社支援をすることが可能です。もし雇用した経験がなくても、以下の条件に当てはまっていれば自社支援が可能です。

  • 過去2年間に別の上記の在留資格の外国人を雇用した会社に勤務し、外国損の生活相談業務を行っていた社員がいる
  • 前年度分の給与所得の源泉徴収額が1500万円以上の会社であること(※この要件については、入国管理局により個別に判断されます。)

いかがでしょうか?自社で特定技能外国人の支援を行えそうですか?

実際に、特定技能外国人の支援をするには、予め支援計画を作成し、それに沿って支援を行うことになります。

では、具体的な支援項目を見てゆきましょう。

4-1.ビザ申請前にガイダンスを行なうこと

特定技能外国人と雇用契約を結んだ後で、ビザ申請をする前に、特定技能外国人に対して事前ガイダンスを行う必要があります。特定技能外国人の日本語レベルに応じて、通訳者を手配する必要も生じるでしょう。(N2以上なら、通訳者は不要かもしれません。)この事前ガイダンスでは、以下の情報を提供します。

  1. 従事する業務の内容,報酬の額その他の労働条件に関する事項
  2. 日本において行うことができる活動の内容
  3. 入国に当たっての手続きに関する事項
  4. 保証金の徴収や違約金を定める契約、その他の不当に金銭や財産の移転を予定する契約の締結をしておらず,かつ,締結させないことが見込まれること
  5. 特定技能の活動の準備に関して自国等の機関に費用を支払っている場合は,その額及び内訳を十分理解して,当該機関との間で合意している必要があること
  6. 支援に要する費用について,直接又は間接に負担させないこととしていること
  7. 入国しようとする港又は飛行場において送迎を行う必要があることとなっていること
  8. 適切な住居の確保に係る支援がされること
  9. 職業生活,日常生活又は社会生活に関する相談又は苦情の申出を受ける体制があること

この事前ガイダンスは3時間程度行なうことが必要とされています。対面やテレビ通話(ZoomやSkypeなど)で行なうことができますが、文書の郵送や電子メールの送信のみで行なうことはできません。

4-2.出入国時に空港へ送迎すること

「特定技能外国人を空港までお迎え・見送りをしてね」ということです。特定技能外国人が帰国時には、不法滞在を防ぐため、ただ空港まで送り届けるだけでなく、保管検査場に入場したことを確認します。この空港までのバスや電車などの交通費は会社が負担することになります。

当然、元留学生や元技能実習生などすでに日本にいる外国人に対しては、入国時のお迎えはありません。

4-3.適切な住居を確保できるよう支援すること

特定技能外国人に、居室の広さが十分あり衛生的な住居を確保できるよう支援する必要があります。
1人あたり7.5㎡以上の居室に住むことが必要で、それより小さいと適切な住居とはみなされません。

具体的に、次のようなことを行います。

  • 不動産仲介業者や賃貸物件の情報を提供し、必要があれば、連帯保証人になること。または、利用可能な家賃債務保証業者を確保し、緊急連絡先となること
  • 自らが賃借人となって賃貸借契約を結び、その上で特定技能外国人にその住居を提供すること
  • 社宅や会社の寮などを提供すること

4-4.入国後(ビザ変更後)に生活オリエンテーションを行なうこと

特定技能外国人が入国後(または、特定技能ビザへ変更後)、生活オリエンテーションを行ないます。これは少なくとも8時間以上、特定技能外国人が理解できる言語で行う必要があります。対面だけでなく、テレビ通話やDVDの視聴などの方法でも問題ありませんが、質問があった場合にリアルタイムに回答できるような体制が必要です。この生活オリエンテーションで以下の情報を提供します。

  1. 日本での生活一般について
  2. 入管法やその他の法令の規定により履行しなければならない届出その他の手続について
  3. 相談又は苦情の申出に対応する者の連絡先や行政機関の連絡先
  4. 特定技能外国人が理解できる言語により医療を受けることができる医療機関について
  5. 防災及び防犯に関する事項並びに急病その他の緊急時における対応について
  6. 出入国又は労働に関する法令の規定に違反していることを知ったときの対応方法などについて

この生活オリエンテーションをするにあたり、法務省が作成した生活・就労ガイドブックがとても役立ちます。このガイドブックに沿って生活オリエンテーションをすれば大丈夫です。

4-5.生活に必要な手続きを支援すること

日本で生活する上で必要になる以下の手続きを支援します。

  • 電気・ガス・水道などのライフラインの契約手続き
  • 銀行の口座開設手続き
  • 携帯電話の契約手続き
  • その他生活に必要な手続き

4-6.日本語学習の機会を提供すること

この日本語学習の機会の提供ですが、必ずしも日本語学校・日本語教室に通学させなければならないということではありません。そうした日本語を学ぶ学校などの入学案内、受講案内などの情報提供も、この日本語学習の機会の提供にあたります。

4-7.日本人との交流促進を支援すること

これは、外国人でも参加できそうな地域のお祭りやボランティア活動についての情報を提供し、必要に応じて参加のお手伝いを促すことです。

一例として、各都道府県にある国際交流協会などが主催するイベントについて案内することができるかもしれません。

4-8.定期的に面談を行なうこと

支援責任者や支援担当者は、3ヶ月に1回以上、特定技能外国人と特定技能外国人を監督する立場にある者(直属の上司)に対して、面談を行う必要があります。この面談は、必ず対面で行う必要があります。そこで、労働法令などの法律に違反していないか、その他問題は発生していないかをヒアリングします。この定期面談報告書(特定技能外国人用監督者用)は、3ヶ月に1度の定期報告の際に入国管理局へ提出します。

4-9.会社都合で退職する場合に、転職支援を行なうこと

特定技能外国人が、会社の経営不振による解雇や会社の倒産のために解雇される場合、再就職ができるようサポートすることが求められています。具体的には、以下のようなことを行います。

  • 再就職先の情報を入手すること
  • ハローワークを案内し、必要に応じて同行すること
  • 再就職しやすいよう推薦状を作成すること
  • 就職活動ができるよう必要な有給休暇を与えること など

まとめ

いかがでしたか?

以上が、特定技能ビザの要件の解説になります。少なくともとても複雑なビザなんだということはお分かりいただけたかと思います。また、この記事の内容は分野に関係なく共通する要件についてまとめられていますので、実際に特定技能ビザの申請をされる方にお役立ていただければ幸いです。

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