外国人を雇用する際,入管法による規制をよく理解していないと,不法就労や不法就労助長罪に問われ,外国人本人だけでなく,外国人を雇用していた会社にまで大きなダメージを受けることになりかねません。
そうならないために「採用担当者が知っておくべき外国人留学生をアルバイトで雇うときの注意点」について,ホワイトボードアニメ形式で出来るだけわかりやすくまとめました。
コンビニや飲食店の店長さんなど,外国人留学生を採用するすべての方のご参考になれば幸いです。
目次
外国人留学生からアルバイトの応募があったら…
突然ですが,あなたはアルバイト希望者の面接をすることがありますか?
もし日本人の学生ではなく,外国人留学生が応募してきたらどうしますか?
日本人と同じように採用できるの?と疑問に思われるかもしれません。
外国人の雇用は、日本人の雇用よりも複雑です
結論から言えば,留学生を問わず外国人を採用するには,日本人を採用するときよりももっと多くのことが関係します。
日本人を採用する場合,その会社の採用基準だけを考えればいいのですが,外国人を採用する場合は,「国が定める採用基準」のことも考える必要があります。
この国が定める採用基準とは,出入国管理法という法律のことです。
この法律は,日本に住む外国人に適用されます。この法律によって,外国人は日本でできる活動の制限を受けています。
外国人の在留資格とは
そして,外国人が日本でどんな活動ができるのかは,その外国人が持っている在留資格で決まります。
この在留資格を,私たちに馴染みのある自動車の運転免許と比較して考えてみましょう。
自動車の運転免許を持っていないと,公道でクルマを運転することはできませんよね。同じように,在留資格を持っていないと,外国人は日本で生活することができません。
また,持っている運転免許の種類によって,どんなクルマを運転できるのか,普通自動車なのか,タクシーなのか,大型トラックなのかが決まります。同じように,日本に住む外国人は在留資格の種類によって,仕事ができるのか,できないのか,どんな仕事ならできるのかなどが決まっています。
外国人を採用する時には,どんな在留資格を持っているのか,必ず確認するようにしましょう。
在留カードを確認しよう
では,面接に来た外国人がどんな在留資格を持っているのか,どうすれば分かるでしょうか?
それは,その外国人が持っている在留カードを見るとわかります。
この在留カードは日本で生活する外国人の身分証明書です。
雇用者は,外国人を雇う前に,必ずこの在留カードを確認するよう義務づけられています。もし外国人が在留カードを持っていないのであれば,原則雇うことはできません。
ここまでで,外国人を雇用する時に,まず押さえておきたい点についてお話ししました。
ここからは,外国人留学生を採用する場合のお話をしたいと思います。
在留資格「留学」は、就労できない在留資格です
外国人留学生,つまり「留学」という在留資格を持っている外国人は,日本で働くことはできますか?
きっと,コンビニやファーストフード店でたくさんの外国人留学生が働いているので,できるとお答えになると思います。
先ほど,答えは在留カードに書かれているとお話しました。
では,ご一緒に次の留学生の在留カードを見てみましょう。
これは,法務省のホームページに掲載されていたサンプルの在留カードです。
まず,左の中程にある在留資格の欄には「留学」と書かれていますので、「留学」という在留資格を持っていることがわかります。
そして,中央には,就労制限の有無という欄があります。
そこには何と書かれているでしょうか?―「就労不可」です。
そうなんです!
実は,「留学」という在留資格は,仕事ができない在留資格です。
でも考えてみると,確かに,留学生は,日本の大学や専門学校に通って学ぶという目的で来日していますので,当然といえば当然です。
このように,留学生は,仕事をすることは原則できないのですが,許可を取れば決まった時間の制限内で働くことが可能です。
資格外活動許可があれば、本来の目的を妨げない範囲で働けます
この許可を「資格外活動許可」と言います。
この資格外活動許可は,本来の在留目的の活動,留学生なら学校に通って授業を受けることですが,その活動を妨げない範囲で与えられます。
留学生の場合は,
- 週に28時間以内
- 学校の長期休業中は,1日につき8時間以内
です。
この2つの制限についてご説明します。
「週に28時間以内」の考え方
「週に28時間以内」とは,日曜日または月曜日から始まった7日間で28時間以内であるだけでなく,どの曜日から1週を起算した場合でも,常に1週について28時間以内である必要があります。
そして,残業時間を含めたトータルで28時間以内である必要があります。
複数のバイトをしている場合,すべてのバイトの合計時間が28時間以内です。
「学校の長期休業中は,1日につき8時間以内」の考え方
学校の長期休業中であれば,週に28時間以内の制限はなくなり,1日につき8時間以内で働くことができます。
これは,学校の長期休暇(夏休み,冬休み,春休み)限定なので,国の祝日(GWや年末年始)は含みません。
長期休暇中に1日8時間働いてもらう前に,留学生が通っている学校に長期休暇の期間を確認されることをお勧めします。
このように,学校の長期休暇中は1日8時間働けるのですが,それを利用して,夏休み中,毎日8時間を週7ペースで働いてもらうことなどは,労働基準法などの別の法律に引っかかりますので,ご注意ください。
風俗営業が含まれるお店では働けません
また,資格外活動許可のある留学生は,好きなアルバイト先で働けますが,一部働けない場所があります。
それは,風俗営業が含まれるお店です。
そのような所では,仕事の内容に関わらず,例え,清掃やベッドメイキングなどの仕事であってもできません。
直接雇われることはもちろん,派遣であってもそのようなお店に出入りした時点で,違反となってしまいますので,ご注意ください。
「資格外活動許可」を取得しているか確認する方法
外国人留学生が資格外活動許可を得ているかどうかは,在留カードやパスポートで確認できます。
資格外活動許可を得ていれば,
- 在留カードの裏面の資格外活動許可欄に,活動範囲が記載されています
- また,パスポートに資格外活動許可のシールが貼られています
もし,資格外活動許可がまだないようなら,留学生に入国管理局で手続きをするよう伝えるとよいでしょう。
法令違反による罰則
もし留学生が,長期間に渡って,資格外活動許可を得ずに働いたり,28時間以内の制限を超えて働いた場合,次回の在留資格の変更や更新が許可されず,本国に帰ることになってしまう場合があります。
た,そのような留学生を雇用していた企業や個人事業主は,不法就労助長罪に問われて,最高で3年以下の懲役・300万円以下の罰金に処される可能性があります。
まとめ
まとめますと,外国人留学生を雇用する方は,
- 外国人を採用する場合,在留カードに書かれている在留資格を必ず確認すること
- 外国人留学生を採用する場合は,資格外活動許可があるか必ず確認すること
- バイトのシフトを組むときに,留学生は週に28時間以内,学校の長期休業中は,1日につき8時間以内しか働けないことに留意すること
- 外国人留学生は風俗営業が含まれるお店では決して働かないこと
を覚えておかれることをお勧めいたします。